2020/03/16
- 『脊柱管狭窄症』が50歳代から急増する
- 中高年の腰痛の原因として多いのが、脊柱管狭窄症です。
- この病気は、40歳代後半から多くなり、50~60歳代にかけて急増します。
- 背骨は脊柱と呼ばれ、椎骨が縦に積み重なってできています。腰の部分にある5つの椎
- 骨を『腰椎』といいます。
- 腰椎の背中側には、縦に細長く伸びる空間があります。ここを、『脊柱管』といいます。
- 脊柱管には、脳からつながる神経の束と椎骨と椎骨をつなぐ『靭帯』が通っています。
- 脊柱管狭窄症は、この脊柱管の周囲の骨が変形したり、靭帯が分厚くなったりして、空
- 間が狭くなってしまう病気です。脊柱管が狭くなると、馬尾やそこから脚へと枝分かれ
- した神経根が、圧迫されてしまいます。その結果、腰の痛みだけでなく、脚がしびれた
- り、動かしにくくなるなどの症状が現れます。
- 先天的に脊柱管が狭かったり正常より狭いまま発育するなどの要因もありますが、原因
- のほとんどは後天的なものです。最も大きな要因は、加齢によって腰椎が変形したり、
- 靭帯の柔軟性が失われ、分厚くなることがあります。また、椎間板ヘルニアが原因にな
- ることもあります。
- 脊柱管の狭窄は、背骨のどの部分にも起こる可能性はありますが、痛みなどの問題が最
- も起きやすいのは、腰椎です。
- 少し歩くと痛む『間欠跛行』が現れる
- 前かがみになると、痛みが強まる椎間板ヘルニアとは異なり、脊柱管狭窄症では、
- 歩いたり、立ったりして、背筋が伸びた状態や、反り返った状態になると、痛みが強ま
- ります。背筋を伸ばしたり反り返ったりすると、前方から椎間板が、後方からは靭帯
- が、脊柱管の内側に向かって隆起してきます。そのため、神経がより強く圧迫されてし
- まうのです。
- 背筋を伸ばしたり反らしたりすると、痛みやしびれが強くなるほか、『間欠跛行』とい
- う症状が見られるのも、脊柱管狭窄症の大きな特徴です。
- 間欠跛行とは、少し歩くと痛みのために歩けなくまり、少し休むと、またすぐ歩けるよ
- うになる状態です。
- 脊柱管狭窄症の場合、歩くと脊柱が伸びて、神経が圧迫されて痛みやしびれが強くなり
- 歩けなくなります。少し休んで前かがみになると、神経の圧迫が緩んで、症状が軽くな
- ります。
- 間欠跛行は脚の血管が狭くなり、血流が悪くなる『抹消動脈疾患』でも起こります。
- この場合は、姿勢には関係なく、少し休むと、また歩けるようになります。
- 脊柱管狭窄症以外の腰痛で、間欠跛行がある場合は、注意が必要です。いずれにしても
- 症状があるときは、すぐに受診するが大切です。
- 症状が出てから3~6か月は保存療法を行ってみる
- 痛みに対しては、『非ステロイド性消炎鎮痛剤』や、神経の痛みを和らげる『抗うつ
- 薬』『抗てんかん薬』を用います。間欠跛行は、神経への血流をよくすると改善するた
- め、『プロスタグランジン製剤』などの、循環障害改善薬を用います。それでも痛みが
- 改善しない場合、『神経ブロック』の注射を行います。そのほか、腰を温める『温熱療
- 法』や、『コルセット』で腰を保護するなどの、治療を行うこともあります。
- 急性の強い痛みがなければ、運動療法を行って、腹筋や背筋を鍛えます。
- 寝るときは硬めのマットを使用し、背筋を必要以上に伸ばしてしまううつ伏せ寝をしな
- いようにします。横向きで膝を軽く曲げて寝たり、膝の下に座布団を敷くと、腰への負
- 担が軽くなります。高い場所に物を持ち上げたり下ろしたりするときは、背伸びをしな
- くて済むよう、踏み台を使いましょう。また、かかとの高い靴を履くと、姿勢が反って
- しまうので、安定性の高い靴を選びます。
- 脊柱管の空間を取り戻す『椎弓切除術』が行われる
- 痛みやしびれのために、日常生活に大きな支障が出るときや、『尿が出ない』といった
- 排尿障害がある場合には、手術療法を検討します。
- 手術法はいくつかありますが、よく行われているのは、神経を圧迫している骨や靭帯を
- 取り除く、『椎弓切除術』です。入院期間は、1週間から10日間です。重労働やスポーツ
- は2~3か月ほど避けますが、日常生活にはすぐ戻れます。特に間欠跛行の改善効果が高
- く、患者さんの生活の質が向上します。ただ、すでに神経が傷ついている場合は、腰痛
- やしびれが残ることがあります。