2020/01/14
痛みやしびれなどを伴う『椎間板ヘルニア』
10~40歳代の若い世代に多い腰痛の原因が、椎間板ヘルニアです。
椎間板ヘルニアは、腰にある神経が圧迫されて、痛みやしびれなどの症状が現れる病気で
す。
背骨の腰の部分は、5つの椎骨で構成されています。そして、椎骨と椎骨の間には、
『椎間板』という軟骨が挟まって入っています。
椎間板は硬い椎骨どうしが直接ぶつからないように、クッションの役割をしています。
腰に大きな負担が掛かると、この椎間板にひびが入り、内部にあるゼリー状の物質
(髄核)が軟骨と一緒に外に飛び出してしまうことがあります。これが、
『椎間板ヘルニア』です。
飛び出したゼリー状の物質が、腰椎を通る神経の束や、そこから枝分かれしている神経を
圧迫すると、強い痛みやしびれなどの症状が現れます。
椎間板にひびが入る原因には、次のようなものがあります。
- ・急激な衝撃…激しい運動や、重い荷物を持つ作業などで、腰に強い衝撃が何度も加わる
- と、どんどん椎間板が劣化し、ひびが入りや
- すくなります。椎間板ヘルニアが若い世代に多いのも、激しい運動や重労
- 働をする人が多いことが一因といえます。
- 強い衝撃だけでなく、デスクワークなどによって長い間悪い姿勢を続けて
- いると、腰に負担が掛かり、やはりひびが入りやすくなります。
- ・加齢…椎間板の老化は、20歳代から始まっています。椎間板が劣化していると、それほ
- ど強くない衝撃でも、ひびが入る可能性があります。
- ・喫煙…喫煙による血流の悪化も、椎間板ヘルニアの要因と考えられています。
- ・体質…体質的に、椎間板にひびが入りやすい人がいます。10歳代で椎間板ヘルニアを
- 起こす場合は、体質的な要因が考えられます。
椎間板ヘルニアでの腰痛では、前かがみを続けると、痛みが強くなるのが特徴です。
前かがみの姿勢になると、椎間板が背中側に押される力が強まり、神経をより強く刺激し
てしまうのです。また、椅子に長く座っていると、腰の痛みが強まります。
椎間板ヘルニアでは、お尻から太もも、ふくらはぎにかけて、痛みやしびれがでたり、
麻痺して脚に力が入りにくいなどの、神経症状が現れやすいのも特徴です。
腰椎からは、馬尾から足へと向かう抹消神経が枝分かれしています。この神経が圧迫され
ると、腰から脚にかけて、神経症状が出てくるのです。
痛みに加え、これらのような神経症状がある場合は、早めに治療を受けるようにしましょ
う。
まずは『保存療法』を行い、様子を見る
ヘルニアというと、すぐに手術を考えがちですが、70%~80%の患者さんは、
『保存療法』で治療できます。3~6ヶ月ほど保存療法を続けると、飛び出したゼリー状の
物質が、自然に吸収されることがあるのです。
そのため、椎間板ヘルニアと診断されたら、まずは、次のような保存療法から始めます。
- ・薬物療法…炎症による痛みには『非ステロイド性消炎鎮痛剤』などが効果的ですが、
- 神経障害による痛みには、あまり効果がありません。しかし、最近は神経障
- 害では『抗てんかん薬』や『抗うつ薬』『抗不安薬』『オピオイド鎮痛薬』
- などを用いて、痛みを抑えます。
- ・装具療法…コルセットを装着して、痛みが強まる姿勢を防ぎます。
- ・神経ブロック…薬物療法や装具でも痛みが治まらないときは、局所麻酔薬などを使い、
- 痛みの伝導をブロックします。
- ・運動療法…痛みが落ち着いたら、腹筋と背筋を鍛える運動療法を始めます。
長時間立つときは、片脚を台に乗せたり、寝るときは膝の下に座布団を入れたり、横向き
で軽く膝を曲げると、腰の筋肉の緊張が和らいで、痛みも軽くなります。
また、持ち上げるときは、できるだけ荷物を体に近づけて、膝を十分に曲げて持ち上げる
よう注意しましょう。
症状が改善しない、神経症状が現れた場合には、手術を検討する。
保存療法を3ヵ月以上行っても、症状が改善しない場合や、しびれや麻痺などの神経症状
が進行している場合、神経が圧迫されて尿が出ない、『排尿障害』がある場合などは、
手術療法を検討します。
最も多く行われているのは、背中の皮膚を切開し、腰椎の後ろ側から手術器具を入れ、
飛び出したゼリー状の物質を取除く方法です。1時間ほどで終了し、入院期間は1週間
程度です。最近は、内視鏡を用いるケースも増えています。
手術の翌日にはもう歩くことができ、デスクワークなら、2週間くらいで復帰できます。
重労働の場合は、2~3ヶ月間ぐらいかかります。ゴルフなどの運動は、3ヵ月くらい
控えてください。患者さんの多くは、手術前は痛みのために体をあまり動かさないので、
筋力が低下しています。手術後、特に問題がなければ、ウォーキングなどの運動を積極的
に行って、筋力をつけましょう。
まとめ…『椎間板ヘルニア』の多くは保存療法で改善します。
保存療法の効果が見られない場合は手術を検討しましょう。