2020/06/03
私たちの身体の水分量は、一定に保たれています。
性別や年齢で差はありますが、胎児では体重の約90%、新生児では約75%、子どもでは約70%、成人では身体の約60~65%、高齢者になると約50~55%に減ってしまう水分量。
また、人間の体は100兆個を超える細胞から成り立っており、体重の約65パーセントを占める水分の約3分の2は、この細胞内に存在しています。残り3分の1は、細胞と細胞の間に存在する細胞間液と血液にあり、それぞれ生命を維持するために働いています。
身体の大半を占める水分を5日も摂らなければ人間は生きていけません。また不足すると、身体に様々な影響が出てきます。
目次
- ★高齢者が脱水を起こす主な原因
- ★不足するとどうなる?
- ★万が一、脱水症状が現れたら・・・
- ★予防方法
- ★上手な水分補給の方法
- ★もしも、水分補給を拒否されたら・・・
高齢者が脱水を起こす主な原因
脱水症は、年齢を問わず誰でもなってしまう可能性がありますが、特に高齢者が脱水症に陥りやすいのには、高齢者特有の理由があります。
- ①口渇中枢の感受性が弱くなる。(喉が渇いた!と感じづらくなる。)
②食事量が少なく、食材から摂取する水分が不足している。
③肝臓の機能が低下しており、老廃物を輩出するための尿量の増加 - ④体内の水分量をコントロールする腎臓の働きが低下すると、
- 塩分濃度を適正に調節できなくなり、脱水症に陥るリスクが高まります。
- ⑤老化にに伴い、筋肉量が減少し、筋肉に蓄えられる水分量が少なくなる
⑥トイレに行く回数を減らそうと、意識的に水分摂取を制限してしまう - ⑦排尿が過剰になる病気を患っていると、脱水症を引き起こすリスクが高まります。
- 例えば、糖尿病の患者の場合、増えすぎた糖を排出しようと尿がたくさん
- 排出されるため、体内の水分量が不足することにつながります。
不足するとどうなる?
- ~実際に水分不足が起こると、どうなるのか、段階別でみてみましょう。~
軽度:皮膚の乾燥(手の甲を軽くつまんだ後にすぐに元に戻らない)・
唇の乾燥・口腔内(口の中)の乾燥、普段湿っているはずの脇の乾燥
行動としては、【傾眠傾向(うとうとした様子)】が頻繁にみられる場合や、め まい・ふらつき、手足の末端が冷たくなるといった症状が現れます。
中度:頭痛・吐き気を感じます。
体の水分量が不足しているため、汗をかかなくなり、排尿(トイレ回数)の減 少・体内の水分量の減少により、体重が減少します。
嘔吐・下痢など、明らかな体調異常が見られます。
重度:話しかけても反応がなく、意識がもうろうとした状態が見られます。
更に悪化すると、体が痙攣したり、意識を失う事があります。
小まめな水分補給で脱水症状は防ぐことが出来ます。
万が一、脱水症状が現れたら・・・
- ①軽度の場合:応急処置としては、経口補水液(水に、食塩とブドウ糖を溶かしたも
- の)を摂取しましょう。水分と電解質の吸収を助けてくれます。
- 経口補水液は現在、さまざまな場所で販売されています。上手に活用し
- ましょう。
- ②中度の場合:経口補水液を、体重1キログラムあたり100ミリリットル飲ませます。
- 下痢がある場合は、1回排泄するごとに、体重1キログラムあたり10ミリ
- リットルを飲ませましょう。嘔吐が見られる場合は、1回嘔吐するごと
- に、吐いた量と同じ程度の経口補水液を飲ませる必要があります。
- ③重度の場合:意識障害や体の痙攣が見られる場合は、口からの水分摂取では間に合わ
- ない可能性があります。自己判断で対応を行うと、命の危険もあります
- ので、点滴などの医療処置を受けるため、すみやかに病院で医師の診断
- を仰ぎましょう。
- また、脱水症状に気付けるよう、日ごろから意識して水分補給と適度に見守る事が大切です。
予防方法
最悪の場合、死に至る危険性も高い脱水症状・・・最も重要な対策は、日々の生活の中で予防する事です。
- ①1日の必要な水分量を知る
Q.高齢者が1日に、食事以外から摂取しなければならない水分量は・・・?
A.個人差もありますが、食事以外の摂取量では、1日あたり
約1ℓ~1.5ℓ必要だと言われています。
1日に摂取する目標を決め、小まめに水分を取っていきましょう!
※ただし、腎臓や心臓に持病があり、水分制限を行っている場合もあります。
その際は、制限されている水分量を守りましょう!
②小まめな水分補給
1日に必要な水分量を目標に、定期的に一定量摂取しましょう。 - 定期的に一定量を摂取することで、
効果的に、体内の体内の水分量を一定を保つ事ができます。
③適度な温度・湿度を保つ
高齢者になると、口渇を感じにくくなると同時に、
温度を察知する機能も低下してきます。
一般的に、温度は28℃、湿度は50~60%に保つように心掛けましょう。
室温が高すぎると、汗をかき、必要以上に水分が身体から出ていきます。
湿度が低くても、温度が高ければ、汗が蒸発せず、体温が高くなってしまうのです。
大量に汗をかいている場合、失われている塩分を摂取しなければなりません。
水だけではなく、ビタミンCや塩分も同時に補給する必要があります!
市販の水分補給ゼリーを常備し、必要な際に利用すると便利です。
上手な水分補給の方法
- ①普段から、手の届く所に飲料を置く
水分補給をしやすいように、目の見える範囲に水分を置いておくと、
気が付いたときに摂取しやすいです。
②【飲む】から【食べる】へ。形状を変える
「飲みましょう!」「飲みましたか?」ばかりでは本人が、 - 「さっきも飲んだのに、まだ飲むのか・・・」と不快に感じ、水分摂取自体を拒否す
- るようになってしまいます。
飲料から水分を摂取するのではなく、食べ物からも摂取できます。効率的に水分補給 - できますので、ぜひ、お試しください!
- ③味・食感に変化をつける
毎日同じ味では飽きてしまいます。飲み物も、お茶・コーヒーなど味を変える - など、工夫しましょう。
- また、ゼリーの食感を柔らかい~少し弾力のある食感へ変化を付けると、
- 飽きずに食べられます。
もしも、水分補給を拒否されたら・・・
無理に飲料を薦めるのではなく、水分の摂取方法を変えてみましょう。
脱水症を予防するには、体に必要な水分を定期的に摂取する必要があります。しかし、筋力が衰えてトイレまでの移動が億劫になったり、失禁の経験があったりすると、トイレに行く回数を減らそうと自分で水分の摂取を控えてしまう人がいます。
なかなか自発的に水分補給をしない場合もあるため、水分が多い食事メニューにしたり、デザートにみずみずしいフルーツを出したりするなど、本人が進んで水分を摂取したくなるような工夫をしてみましょう。すぐに手が届く場所にいつも飲み物のペットボトルを準備しておくのもおすすめです。
- 例:ゼリー・スープには水分量が多く、脱水を予防するのに効果的です。
食材では、こんにゃく・もやし・白菜・きゅうり・大根・なめこなど、
水分が多く含まれているので、合わせて使用すると効果的に水分不足を - 予防できます。
自分でのどの渇きや体の不調に気づきにくい高齢者の脱水症を防ぐには、周囲のサポートが必要不可欠です。家族や周りの人は積極的に気遣ってあげてください。